江戸・東京の都市史、日本近代史について書いているといえる物語風の本です。


東京の「地霊(ゲニウス・ロキ)」

本書のまえがきにこんなことがかいてあります。
「どのような土地であれ、土地には固有の可能性が秘められている。その可能性の奇跡が現在の土地の姿をつくりだし、都市をつくりだしていく。東京の場合も、決して例外ではなかった。むしろ近代の東京の歴史は、そうした土地の集積として見られなければならなかったのではないか。都市の歴史は土地の歴史である。」
この本は、はじめにも述べた東京の都市の歴史を書いた本です。

そして、タイトルにもある「地霊」という、なんともおっかなくも神秘的な言葉がつけられています。
この「地霊」とは、「ゲニウス・ロキ(Genius loci)」ということばの訳語だそうです。
ゲニウス・ロキは、一般的には、土地に対する守護の霊とか土地霊とか土地の精霊と訳せます。しかし、この本では、この言葉を「土地から引き出される霊感とか、土地に結びついた連想性、土地がもつ可能性」といった概念でつかったようです。
もともとこの言葉は、イギリスで注目された概念だそうですよ。
内容的には、上記のような圧倒的な言葉とどうつながっているかまではなかなか理解するにはたいへんですが、東京の各地域で歴史的にも、物語がありポテンシャルをもった都内13カ所の場所について、人物、建物、歴史の変遷をたどりながらその土地の成り立ちを読み解いた物語です。


目次
1 民活第一号の土地にまつわる薄幸
2 「暗殺の土地」が辿った百年の道のり
3 明治の覇者達が求めた新しい地霊
4 江戸の鬼門に「京都」があった
5 江戸の「桜名所」の大いなる変身
6 現代の「五秀六艶楼」のあるじ
7 幻と化した「新宿ヴェルサイユ宮殿」
8 目白の将軍の軍略にも似た地政学
9 三井と張り合う都内最強の土地
10 「目黒の殿様」がみせた士魂商才
11 東大キャンパス内の様々なる意匠
12 東京西郊の新開地・うたかたの地霊
13 昭和・平成二代にわたる皇后の「館」